腱鞘炎の治し方

疾患

つらい腱鞘炎



腱鞘炎(けんしょうえん)は手首や指に多く見られる症状です。


手の自由が奪われるので、日常生活への影響も大きくとても困った疾患です。


腱鞘炎には大きく分けて二つの原因があります。


・ホルモンの影響によるもの


・手の使い方によるもの


の二つです。



腱鞘炎はよく手の使い過ぎが原因だと言われますが、たくさん使ってもならない人はなりません。


確かに使いすぎは発症のきっかけにはなりますが、手をよく使う人全員が発症するわけではない事実を考えると、使いすぎだけで腱鞘炎になるとは思えません。


今回はよくある手首の腱鞘炎を取り上げて


「セラピストが施術する際にどのように考えてアプローチしていくか?」


ということを考えていきましょう。



まずはじめに腱鞘炎とはどのような状態のことを言うのか?を確認しておきましょう。

腱鞘炎とは?

“腱鞘炎”とは、”腱鞘”と呼ばれる組織に炎症が起きた状態のことなのですが、”腱鞘”という言葉はあまり馴染みがないかもしれません。



特に”腱”と”腱鞘”が混同されがちなのでまずここを整理していきましょう。

腱とは


 ”腱”というのは筋肉が骨につく前の硬くなった箇所のことです。


 筋肉を細かくみると、縮んだり緩んだりして長さを変えることのできる”筋腹(きんぷく)”と、その両端にある硬い”腱”によってできています。


 腱は伸び縮み出来ない硬いひものようになっていて、筋腹の力を骨に伝える役割を担っています。


筋腹は力こぶをイメージするとわかりやすいと思います。


肘を曲げると筋肉が縮んで盛り上がりますが、このとき筋腹が短くなっている訳です。



しかし腱の長さは筋肉が縮んでも緩んでも全く変わりません。


縮んだり緩んだりする筋腹の力を硬いヒモとして骨に伝えているのが腱の役割です。


腱鞘とは?


 一方で”腱鞘”とは、腱の一部分を覆う組織のことです。


 腱の周りを腱鞘がぐるっと取り囲んでいる訳です。




 腱鞘は手首や指など、たくさんの腱が集まる部分に多くみられ、腱を包み込んでいます。


近くを走る腱どうしが擦れ合って傷むことを防いでいる訳ですね。




これら隣り合う腱鞘どうしが擦れあったり、腱鞘とその中を通る腱の間で摩擦が生じて腱鞘が腫れてしまうことがあります。これが腱鞘炎です。

摩擦がおきるので熱を持ったり、動かした際に強い痛みを生じたりします。




ではなぜ腱鞘炎になってしまうのでしょうか?

腱鞘炎には大きく分けて二つの原因がありますので、具体的な処置方法と合わせて確認していきましょう。

①ホルモンによるもの


女性の場合はホルモンの影響により腱鞘炎になることがあります。


腱鞘炎は女性に多い疾患ですが、それは女性に手を使う機会が多いからというだけではなく、女性ホルモンが腱鞘炎に関係しているからです。

・エストロゲンの影響


エストロゲンという女性ホルモンがあるのですが、年を重ねるにつれてこのホルモンの分泌量は低下してきます。


そしてエストロゲンが少なくなると関節周囲の組織が腫れやすくなることがわかっています。



この場合は外から力を加える施術で直接的な処置を出来るわけではないですね。


手技療法にできることとしたら自律神経系のアプローチであれば何かしら効果があるかもしれません。

・大豆イソフラボンとエクオール


ホルモンが原因と思われる場合の対処法としては栄養面からのアプローチが良いでしょう。


大豆に含まれるイソフラボンを原料として作られるエクオールという物質がエストロゲンに似た構造をしているので、少なくなったエストロゲンの代わりに働いてくれます。


なのでこのエクオールの原料となる大豆イソフラボンを摂取することが良いと考えられます。要するに大豆製品を食べれば良いということですね。


ただし大豆イソフラボンを摂取してもこのエクオールを作ることの出来ない体質の人もかなりの割合で存在します。

この場合はエクオールをサプリメントで摂取するのが良いでしょう。

②使い方によるもの

腱鞘炎にはこのようにホルモンの影響によるものもありますが、やはり手を使う頻度が高いと発症しやいのは間違いありません。


しかしどれだけ手を使っても大丈夫な人もいてますし、少し使っただけで発症する人もいます。


この違いはどこからきているのでしょうか?


それは手の使い方にあります。


腱鞘炎は手に負担のかかる状態で使い過ぎた時に発症します。

・手首に大きな負担のかかる状態


では手に負担のかかる状態とは具体的にはどのようなものでしょうか?

手首の腱鞘炎をおこす人に共通してみられる状態があります。


それは前腕部と親指が一直線になっているということです。


このような状態で手を使っていると手に大きな負担がかかり、腱鞘炎になる確率が高くなります。



こうなってしまう理由には手の機能が関係しています。


手には大きく分けて

“つかむ”と”つまむ”

の二つの機能があります。


この二つの機能を正しく使えていないと、腱鞘炎になりやすくなってしまいます。

・”つまむ”と”つかむ”の違い

“つまむ”という動作は指先で物をはさむ動きを意味します。

この時使う指は親指と人差し指です。


つまむ動作には大きな力は必要なく、細かく動かすことが要求されます。

そのため親指や人差し指には細かく動かすための機能が備わっています。


一方で”つかむ”と言う動作は手でしっかりとものを握る動きを意味します。


動かないように大きな力を出して強く握りしめる動きは、小指、薬指、中指が適した構造をしています。中でも小指が一番大事です。

・小指の力


小指は力の弱いイメージがあると思いますが、意外にも逆で小指が使えないと握る動きはほとんど出来なくなります。


試しに普通に握り拳を作って強く握り締めた時と、小指を一本伸ばした状態で握り締めた時との違いを体感してみてください。小指を立てて指を握ると握力は半分以下になってしまいます。


実際、野球のバットやゴルフのクラブ、そして剣道の竹刀など全て小指側からグリップをきかして握ることが要求されるのは、経験者の方ならご存知かもしれません。


それだけ小指側に位置する指はつかむ動作に適した構造をしているわけです。


親指と人差し指はつまむ指で、小指を含むそれ以外の三本はつかむ指です


まずこの違いを理解してください。 

しかしながら”つかむ”と”つまむ”の二つの動作を意識せずにしていることがほとんどだと思います。


その結果、本来は繊細な”つまむ”動きに適した構造をした人差し指や親指を”つかむ”ために使ってしまうようになります。


こうなると親指や人差し指を先に伸ばしてものをつかもうとするので、小指が外側に倒れてしまい、前腕と親指が一直線に並んだ手に負担のかかりやすい状態になってしまいます。


このように手が傾いた状態からさらに物をつかもうと、親指を先に伸ばす動きをしながら手を使うので、手首の親指側に大きな負担がかかり腱鞘炎を発症しやすくなると考えられます。

・セラピストが意識すること


ですので、腱鞘炎の処置方法としては、まずはクライアントさんに物をつかむときに小指側を使うことを意識してもらうことです。

これだけでずいぶん負担を軽減できますので、しっかりとクライアントさんに説明して理解してもらいます。


続いて手技による処置の方法です。

親指から物をつかむ癖がついていると、手首が小指側に倒れてしまっています。

この場合は小指から肘の内側のラインを通る筋肉が硬くなって手首を傾けているので、マッサージでこの部分を柔らかくして、その状態を矯正していきます。


具体的には尺側手根屈筋、尺側手根伸筋といった筋肉が対象になります。手首の小指側から前腕の内側のラインを念入りに緩めていきます。



そして手の指や手首を曲げたり伸ばしたりする筋肉群を緩めていきます。
前腕の手のひら側には曲げる筋肉が、手の甲側には伸ばす筋肉がついています。



曲げる筋肉は、肘の内側から手のひらまでの範囲にアプローチしていきます。
スタートと終わりをしっかりと意識するようにしてください。

ストレッチの場合は、手のひらを上に向けた状態で肘を伸ばしたまま、もう片側の手で手のひらを下に押し下げます。こうすることで筋肉を伸ばすことができます。




伸ばす筋肉は肘の外側から手の甲までの範囲にアプローチします。


ストレッチの場合は、手の甲を上に向けた状態で肘を伸ばしたまま、もう片側の手で手の甲を下に押し下げます。こうすることで筋肉を伸ばすことができます。


加えて手のひらの筋肉を緩めます。特に親指の付け根にある母指球と呼ばれる筋肉が盛り上がった箇所を緩めていきます。


内側に入り込んだ親指を広げていくイメージです。


前腕には指や手首を動かす筋肉がついているので、この部分を柔らかくすると、手首や指も動かしやすくなるわけです。

前腕部と中指が一直線に並んだ状態で手を使えるようになると、腱鞘への負担も少なく、腱鞘炎になりにくいので、このような状態を目指してください。


そして傷んだ箇所は炎症を起こしているので毎日可能な限り少なくとも20分は氷で冷やしてしっかりと炎症を取り除くことが必要です。逆に温めたり、お酒を飲んだりは控えた方が良いです。これらもクライアントさんに伝えるようにしてください。

このようにしてしばらく経過をみてください。

しっかりと処置ができていれば少しずつ痛みが軽減してきます。
どうしても無理に動かさないといけない場合は、テーピングやプライトンという固定具による処置も選択します。

これらの処置をしても改善が見られない場合は、投薬、手術などの処置が必要になる場合もありますので、専門の医療機関を受診されるように勧めてください。

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