体を柔らかくするためには大きく分けて二通りのアプローチがあります。
筋肉など体の組織を伸ばして物理的に柔らかくする方法と、神経の特性を利用して柔軟性を高める方法の二つです。
これらの効果を順に見ていきましょう。
⑴物理的にからだを柔らかくする
まずは物理的なアプローチ方法です。
体の組織を伸ばすエクササイズとして代表的なものはストレッチです。
筋肉、筋膜などはコラーゲン繊維を多く含んでいますが、このコラーゲンは引っ張られることにより長さが伸びる性質があります。
ですのでストレッチをするとコラーゲンが伸ばされて体が柔らかくなる訳です。
これはシンプルな方法でイメージしやすいと思います。
⑵神経の働きを使ってからだを柔らかくする
次に神経の働きを使って体を柔らかくする方法です。
これには2種類の方法があります。
1.筋肉の中にあるセンサーをコントロールする
一つは筋肉の中にあるセンサーをコントロールする方法です。
筋肉の中には長さを感知するセンサーがあります。
これは筋肉が伸ばされすぎて切れないように、長さを調整するためのものです。
ストレッチなどをして筋肉を伸ばすと、このセンサーが反応して、筋肉に縮むように指令を送ります。筋肉を柔らかくしようと伸ばしているのに、実際には逆に筋肉は縮まろうとして硬くなってしまうのです。
なぜこうした事が起こるかと言うと、筋肉が引っ張られ続けるとやがては切れてしまうので、そうならないように筋肉自体を固くして伸ばされる力に抵抗して体を守っている訳です。
しかしながら弱い刺激を継続的に与え続けると、このセンサーが徐々に慣れてきて筋肉を硬めようとしなくなってきます。
「このぐらいの引っ張られ度合いなら体が壊れる心配はない」と判断する訳です。
こうなると伸ばしていても余裕あるように感じてきますので、もう少し負荷をかけて更に伸ばすようにします。
そうすることで徐々に柔軟性が高まってきます。
この時ゆっくりと呼吸をしながら時間をかけて(少なくとも30秒は)体を伸ばしていくのがポイントになります。
(※逆にセンサーに強い刺激が入るだけの短時間の強い負荷や、反動をつけてのストレッチは柔軟性の向上にはあまり意味がありません。しかしながらスポーツをする前に筋肉を刺激したり別の目的として用いられることがよくあります)
2.反対の働きをする筋肉に刺激を入れる
もう一つは反対の働きをする筋肉に刺激を入れる方法です。
膝を曲げる筋肉と伸ばす筋肉、肘を曲げる筋肉と伸ばす筋肉といった具合に、筋肉には拮抗筋(きっこうきん)と呼ばれる、反対の働きをする筋肉があります。
これらは“片側の筋肉に力を入れて硬くした時には反対の働きをする筋肉は柔らかくなる”という特性を持っています。
ですので膝を曲げる筋肉が硬くなると伸ばす筋肉柔らかくなり、逆に膝を伸ばす筋肉硬くなると曲げる筋肉は柔らかくなります。
この反応を柔らかくしたい箇所に利用する事が出来る訳です。
例えば太ももの裏側やふくらはぎを柔らかくしたい時には、太もも前やスネの前に力を入れれば良い訳です。
具体的には片脚を伸ばして座った状態から伸ばした脚の膝の裏側を床に押し付けるように太ももの前側に力を入れてみます。
同時につま先を自分に近づけるようにスネの前にも力をいれます。
この動きを3秒程度してから伸ばした脚に向けて身体を倒すと、力をいれる前よりも簡単に前屈することが出来ます。
力を入れる前と後でどのくらい動きが変わるか試してみてください。
こうしたメカニズムを理解しておくとからだを柔らかくする際の助けになります。
無理のないように取り組んでみてください。