免疫と予防接種の仕組みを簡単に解説します

免疫とは疫から免れると書きますが、疫とは病気のことで、文字通り病気から身を守るための仕組みを意味するのが免疫という言葉です。

病気に関わらないように体に備わったシステムのことですね。

免疫とかワクチンとかなんとなくわかっているとけどなんだかはっきりとはわからない、という方も多いと思いますので、一度簡単に整理していきましょう。

二種類の免疫システム

免疫は大きく分けて二つに分かれます。自然免疫獲得免疫です。

自然免疫というのは体に入ってきた異物であればなんであっても攻撃する免疫システムです。

一方で獲得免疫というのは特定の病原体に対してのみ働く免疫システムです。大まかな流れとしてはまずは自然免疫が働いて、それから獲得免疫が働く、という風になります。

第一の免疫 自然免疫

体にとっての異物であるウイルスや細菌などの病原体が体内に侵入するとまずは自然免疫が作用するわけですが、このときにに働くのが白血球です。

白血球はたくさんの種類に分かれていてマクロファージや好中球、樹状細胞、NK細胞と呼ばれるものがあります。自然免疫ではこれらの白血球が働いています。マクロファージや樹状細胞、好中球といった白血球は異物を見つけると、それをかたっぱしから食べていきます。

このとき食べるか食べないか?の判断基準は自分の細胞の一部かそうでないか、自分なのかそれ以外なのか?ということを判断材料として自分以外のものはなんでもかんでもかたっぱしから食べていくわけです。多くの病原体はこれで退治されてしまいます。
しかしここを潜り抜ける賢い病原体もいます。その代表的なものがウイルスです。

ウイルスはとても小さくてそれ単体では生きていくことができません。そこで細胞に寄生して生きていくわけです。
細胞の中に侵入したウイルスは細胞の遺伝情報を自分のものに書き換えてしまいます。そうすることで体内の細胞を乗っとるわけですね。


乗っ取られた細胞は一見すると自分自身に見えるので、マクロファージや好中球などは食べてくれません。自分か自分じゃないかの基準で食べるかどうかを区別しているので、中にウイルスが潜んでいても見た目が自分だと食べてくれないわけです。こうしてウイルスは体内で増殖していこうとするわけです。

しかし体には中に潜んだウイルスを見つけ出して攻撃する仕組みも備わっています。それを担うのがNK細胞と呼ばれる白血球です。NK細胞は見た目が自分である細胞でも、中に潜んだウイルスを見つけ出すことができます。NK細胞はウイルスに感染した細胞を見つけると殺してしまうのです。こうしてウイルスの増殖を抑えていく仕組みも備わっています。

ここまで整理しますと自分かそれ以外か、という基準で体内に侵入してきた異物を攻撃するのが白血球です。白血球にはいろいろな種類があり、マクロファージ、樹状細胞、好中球と呼ばれるものは異物をひたすら食べます。そしてNK細胞は自分の細胞の中に隠れたウイルスを見つけ出し、感染した細胞を殺してウイルスの増殖を抑えます。これが体内で最初に起こる免疫反応である自然免疫の仕組みです。

第二の免疫 獲得免疫

続いて獲得免疫です。


自然免疫とは本来自然に体に備わっている免疫システムのことを意味しますが、この獲得免疫は後天的に手に入れた免疫システムのことを意味します。

自然免疫で働いたマクロファージや樹状細胞という白血球は、異物をひたすら食べるわけですが、実は食べて終わりではなく、食べたものの残骸を提示する仕組みが備わっています。さらし首みたいな感じでしょうか。このさらされた残骸を分析してその情報を読み取って、これに対する有効な対処法を作り出してから働くのが獲得免疫です。なのでこれはさらされた残骸のみにしか作用しない仕組みです。後天的に獲得された免疫という意味で獲得免疫と呼ばれるわけです。

獲得免疫では大きく分けて二つの仕組みが働きます。まずは先ほどのNK細胞のように細胞内に潜んだウイルスを見つけ出して殺してく仕組みです。このときに働くのがキラーT細胞を呼ばれる細胞です。これはNK細胞よりもかなり強力な作用を持ちます。

もう一つが抗体を作って病原体の働きを止めてしまうという働きです。これはB細胞という細胞が働くのですが、病原体の情報を分析して作り出した抗体という物体を病原体に結合させることでその働きを封じ込めてしまう作用です。抗体にくっつかれると病原体は働けなくなるわけですね。

自然免疫より獲得免疫の方が強力な働きをします。
ただ獲得免疫は作用し出すまで時間がかかるのが難点です。病原体を分析してその情報をもとに対処法を練って、としていると数日はかかるわけで、その間に病原体が体に広がらないように自然免疫で抑えているわけです。その間に病原体の情報を分析して獲得免疫の準備をしているわけですね。

それと、獲得免疫には一度戦った病原体の情報を記憶できる、という特徴もあります。期間は病原体によってそれぞれですが、少なくともしばらくの間は一度戦った病原体の情報を記憶しているので次に同じ病原体が侵入してきた場合、最初から獲得免疫の仕組みが働き、強力な攻撃を加えることができます。

予防接種が作用するメカニズム

この仕組みを利用したのがワクチンです。毒性を弱めたり感染力を失わせた病原体をワクチンとよびますが、これを体内に投与することを予防接種と言います。このように体内に弱めた病原体を意図的に投与してB細胞に抗体を作らせるわけです。

そうすると実際にその病原体にかかったときには既に抗体があるので、ゼロから抗体を作る必要がないわけです。通常のように時間をかけずにすぐさま抗体で攻撃することができるので、このようにして病原体を退治するわけですね。

ちなみに自然免疫が強い人は獲得免疫に至るまでもなく病原体を退治することができますが、この場合は病気にかかっても抗体ができていないということもあるようです。抗体は病原体によってどのくらい持続するのかはまちまちのようで一生続くものもあれば、割と短いものもあるようです。

免疫力を高めるとは、こうした仕組みがしっかりと働ける状態にしておくことです。そのためにはいろいろな手段がありますが、基本的にはしっかり栄養をとって、休めて、運動してというごく当たり前のことが一番大切になってきますので、しっかりと心がけて過ごしていきたいですね。

今回は免疫の仕組みの要点のみを簡単にまとめてみました。参考にしてみてください。

プロテインを飲むと筋肉がつくのか?

『プロテインを飲むと筋肉がつくのか?』

とよく訊かれるんですが、結論から言うとプロテインを飲んだだけで筋肉はつきません。

では筋肉をつけるためになんでプロテインを摂取するのか?と言う話になりますが、それを理解するにはまず筋トレのメカニズムを知る必要があります。

例えば腕立て伏せとかバーベルを持ちあげたりとか、なんでも良いですが筋トレをすると段々と力が入らなくなってきます。

これは筋肉を作る筋線維という組織が壊れることによって力が入らなくなってきます。

筋肉は筋線維という細い紐状の組織が束になってできているのですが、筋トレはこの筋線維を部分的に壊すことを目的として行っています。

それは筋線維は壊れると、修復するときに壊れる前より少し強くなって修復するという性質があるからです。

これを超回復と呼んでいるのですが、筋トレはこの筋肉の性質を利用したもので、筋肉に負荷をかけて筋線維を意図的に壊し、それを修復させて以前より少し強くすることで筋力の強化を可能にしているわけです。

そしてこの壊れた筋線維が修復される過程で必要になるのがタンパク質です。筋肉はタンパク質からできているので、その材料となるタンパク質をしっかりと摂取しないと壊れた筋肉が十分に再生されないわけです。そうなるとせっかく頑張って筋トレをしても十分な効果が得られないわけですね。

そこでプロテインを利用するわけです。

プロテインと言うと粉状の物質をイメージする方が多いかもしれませんが、そもそもプロテインという言葉を日本語にするとタンパク質という意味になります。

あの粉は筋肉をつける魔法の薬ではなく、ただのタンパク質の粉末です。タンパク質は食品の多く含まれていて肉や魚、卵、牛乳などが代表的なところでしょう。

ですので肉を食べてもプロテインを飲んでも結局はタンパク質を摂取していることに変わりはありません。と言うか栄養は基本的には食事からしっかり摂ったほうが良いので、別にプロテインを飲まなければいけないなんてことはありません。

ただ例えば食事制限などであまり食べれないといった場合や、かなりの負荷でトレーニングをするアスリートなどには効率よくタンパク質を摂取する手段としてプロテインを使うというのは良いと思います。

ですのでプロテインを飲むと筋肉がつくのではありません。

筋トレをして傷んだ筋肉を強く再生するためのタンパク質を摂取する手段としてプロテインが効果的だということです。

この点を理解しておくことが大切です。

ただ、繰り返しになりますが、原則として栄養素は食事から摂るのが基本です。栄養素が吸収される過程はまだまだ不明なことも多いですし、タンパク質単体よりは他の物質もあったほうが効率よく栄養素が吸収されます。サプリメントにしてもそうですが、プロテインはあくまで栄養補助食品として利用するようにしてください。

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外反母趾への対処方法

なんで外反母趾になるのか?

外反母趾に悩まされている方は少なくないと思います。

親指が傾いてしまった状態が外反母趾ですが、実はこうなるには様々な理由があります。

親指が傾いてしまう原因としてまず思いつくのが先の細い靴などを履くことで指先が締め付けられる、ということでしょう。

もちろんこれも大きな要因の一つですので、改善すべきポイントであることに違いありません。

しかしながら他にも原因となりやすい要素があります。

今回は見落とされがちな二つのポイントをご紹介していきます。

1.足のうらの外側にあるアーチが下がっている

まず最初に注目すべきは、足の骨の並びです。

足の甲や足の裏を構成する骨は、付け根のところで石ころ状の骨が集まることで足を形作っています。

この石ころ状の骨の位置がずれてしまうことが外反母趾を引き起こす要因になります。

どういうことか順を追ってみていきましょう。

①立方骨が下外側に落ちて外側縦アーチが崩れる

足の小指側にあるアーチの頂点が下がってしまいます。

足の内側には土踏まずがあり、こちらは内側のアーチとも呼ばれわかりやすい形状をしているのですが、実は足の外側にも僅かながらアーチがあります。

ご自身の足の裏をよく観察してみると、小指の延長線上にも浅いアーチがあるのがわかると思います。

このアーチの頂点に位置するのが立方骨です。これが図の①のように外側、下側に下がってきてしまうことがあります。

②足根骨が外にスライドする

立方骨がずれてしまったことによって、その隣にある石ころ状の骨もずれてしまいます。
ここには楔状骨(けつじょうこつ)という三つの骨があるのですが、これが順に外側に移動してしまいます。そうして足根骨が全体的に外にズレてしまいます。

③第一中足骨が内側に傾く

楔状骨がずれてしまうと、一番内側の楔状骨につながっている親指の根元の骨、第一中足骨は足場を失なってしまいます。そのため内側に傾いてしまいます。

④親指が曲がって赤丸の箇所にストレスがかかる

その結果、靴を履いたり歩いたりする際に指先の関節に内側から圧迫がかかるようになり、親指の付け根の関節が折れ曲がってしまいます。これが外反母趾です。

このような足部のアライメント不良はかなりの確率でみられます。

曲がったところを真っ直ぐにする前にまずは立方骨を調整して外側縦アーチをしっかりと作る事が大切ですね。

そのためにテーピングを利用するのが有効ですので、巻き方の一例をご紹介します。

ここではキネシオテープに代表される伸縮性のあるテーピングを使用します。

50ミリ幅のテープを半分の25 ミリ幅に切って2.5マスと2マスの2本を用意します。
もしくは25ミリ幅のものを別に準備して頂いても構いません。

この25ミリ幅のテープを使って2.5マスを内に倒れた親指を矯正するように縦に貼ります。
2マスで親指に貼った箇所が剥がれないように上からとめます。

次に50ミリ2マスを3回ほど折り畳んで小さなパットを作り小指側のアーチの頂点に当てます。

そのまま50ミリ4.5マスを使って土踏まずの一番高いところのラインを横にサポートします。

動画のリンクを貼っておきますので参考にしてください。

2.つま先が外側を向いている

次のポイントとしてつま先の向きがあります。

外反母趾になりやすい方の傾向として、つま先が外側を向いていることが挙げられます。

つま先が外に向くと、地面を蹴る時に親指の内側を使ってしまう傾向があります。

こうなると親指が内側に傾きやすくなり、外反母趾を発症する一因となります。

人差し指で地面を蹴ると一番負担が少ないのですが、つま先が外を向くことで親指の内側で地面を蹴ると親指の関節に大きな負担がかかり外反母趾になりやすくなってしまうわけです。

つま先が外を向いてしまうのはいくつか要因があるのですが、代表的なものとしてはお尻の奥の筋肉が硬いということが挙げられます。

お尻の奥にある筋肉はつま先や膝を外に向ける働きをしています。

そのため、お尻の奥にある筋肉が硬くなるとつま先が外に向きやすくなってしまいます。

実際にお尻の奥をクッと力を入れて締めるとつま先や膝が開くのがわかると思います。

この中の番号をつけてある箇所がつま先を外に向けるときに働く筋肉です。

ですのでこの場合はお尻の奥のストレッチをするのが効果的です。

また、歩くときにつま先の向きを意識して、外に向かないような歩き方を習得するのも良いでしょう。

軟骨の変形について

関節の中には軟骨という組織があります。

この軟骨は骨を保護したり、関節を滑らかに動かしたりする働きがあるのですが、ずっと使っている少しずつすり減ってきてしまいます。

そしてすり減ってしまった軟骨は再生できないので、そのまま関節の変形が進んでいきます。

変形性関節症は膝や股関節によくみられますが、どこの関節でも起こり得ます。

外反母趾もかなり進行した状態だと軟骨がすり減って関節が変形している場合もあります。


この場合は元に戻すのは難しいので、上手く付き合っていく必要があります。

場合によっては手術などの選択肢も検討しないといけないかもしれません。

いずれにせよ、親指に負担がかかる要因を解消していくことが大切になります。

放っておいてもよくなる訳ではないので、早めに処置を開始することをお勧めします。

古田大祐